+First step+





毎月決まって会うのは12日。

同じ場所、同じ時間、同じ席に待ち合わせる二人。

でもいつも先に来るのは決まってヒイロで、デュオは遅れる訳ではないのだが先に来た事はなかった。

今日もデュオはカフェに向かう。

扉を開けて無意識にいつもの席に目を向ける。

(珍しい〜。)

デュオは心の中で呟いた。

いつもそこに座っているはずの相手が今日はいない。

デュオは席に向かって歩き出し、そっと自分の腕時計を見た。

1時55分

デュオが来るのは待ち合わせの5分前。

いつもだったらヒイロは10分前に着いているはずだ。

(仕事が忙しいのか?)

そんな考えが頭に浮かぶ。

だが二人がこうして毎月同じ日に会うようになってもう1年近くになる。

その間、一度もヒイロは遅れて来た事はなかった。

住んでる所も仕事も違う二人。

それでも変わらず会っているのは、世界がまだ完全な平和を取り戻した訳ではないからだろう。

月に一度の逢瀬……なんて言えば聞こえはいいが、実際の所、互いの情報交換の為に会っている。

ヒイロは地球の情報を、デュオはコロニーの情報を。

互いが情報を交換し合うことで、平和に貢献しているという訳だ。

お水を運んで来た従業員にアイスティを頼み、水を一口含んだ所でヒイロがやって来た。

「よう!遅かったな。何かあったのか?」

「いや。」

ヒイロも腰を下ろし、先程の従業員にアイスコーヒーを頼む。

「だって珍しいだろ、お前が俺より後に来るなんて。」

「道が混んでいた…それだけだ。」

本当のことを言いたくないのか、それが本当なのかデュオには検討がつかない。

「まっ、いっか。じゃ本題に入ろうぜ!」

「ああ。」

ヒイロとデュオは互いのディスクを交換し合う。

「今回はちょっとばかし厄介だぜ。大手製薬会社がまたよからぬモノを作ってる。そっちは?」

デュオが少しだけ身を乗り出して小声で言った。

「こちらは特に問題はない。それより今の情報は確かか?」

「ああ。裏でこそこそ動いてるみたいだ。」

「…わかった。後で五飛にも知らせておく。」

会話が途切れた所でお互い喉を潤す。

そして何気ない日常会話を交わすのだ。

昨日何を食べたとか、最近あった出来事など。

そうして1時間ぐらい話してグラスが空になる頃カフェを出る。

一緒に席を立ち出口に向かう。

「先に出ていろ。」

レシートを持ったヒイロがデュオに目線で促す。

それに素直に従ってデュオはカフェを出た。










カフェから出てデュオはこれからどうしようか考えていた。

「そこの彼女、俺たちと遊びに行かない?」

「ねぇ、聞こえてる彼女?」

デュオの側で話しかけられてる女の子がいるらしい。

(今どきそんな誘い方する奴いるんだな〜)

そんな風に考えていると、不意に肩を掴まれた。

「彼女、無視はよくないな〜。」

(俺のことかっ!!)

一瞬誰のことを言われているのか分からなかったデュオ。

振り返るとニヤニヤした男2人がデュオを囲むように立っていた。

(誰が彼女だ!)

殴ってやりたい衝動を抑えながらなるべく低い声を出した。

「…悪い、今連れ待ってるから。」

それだけ言って掴まれている腕を放そうと手を伸ばした。

「何をしている。」

「!!」

「ヒイロ!」

会計を済ませて出て来たヒイロは不機嫌さを隠しもせずに立っていた。

目付きの悪いヒイロに睨まれて男達はたじろいでいる。

ヒイロはデュオの肩に手をかけている男の手をグッと掴み上げた。

「何だこの手は?」

「痛っっ!イテテテっ!!!やめっ、放せっ!」

男は腕を振り払おうとするが、ヒイロの腕は益々力を増していく。

流石に可愛そうになってきたのかデュオが止めに入った。

「ヒイロ、その辺にしてやれよ!腕折っちまう気か?」

その一言でもう一人の男も慌てて参加して腕を解きにかかる。

漸く満足したのかヒイロが腕を放した。

軽く涙ぐみながら腕を擦る男。

ヒイロはデュオを自分の肩に抱き寄せ、男達に見せびらかす様に言い放った。

「俺のだ。」

固まる男達に踵を返し歩き出すヒイロ。

肩を抱かれている為一緒に付いて行くしかないデュオ。

「ちっ、彼氏持ちかよ!」

角を曲がる直前に男の落胆した声が微かに聞こえた。















「……おい、いつまでこうやってんだよ?」

その言葉を聞いて漸くヒイロはデュオを開放した。

「ったく、今日はついてねぇ。誰が彼女だっ!誰が彼氏持ちだって?あ〜クソッ、ムカツク!」

「隙を見せるお前が悪い。」

「何だって?」

「簡単に肩を掴まれるなんて、腕が鈍ったんじゃないのか?」

「あれはっ……お前が来なかったらちゃんと外してたよ。」

「どうだかな。」

何時になく突っかかってくるヒイロ。

「何?今日はやけに絡んでくるのな。」

少しイライラした調子で尋ねるデュオ。

「それに、俺はいつからお前の物になったんだ?」

今度は笑いながらヒイロに尋ねた。

「……さっきだ。」

「へっ?」

(今のは冗談か?)

デュオはそう思わずにはいられなかった。

「嫌なのか?」

反対に聞き返されて返答に困るデュオ。

「嫌も何も……いつからそういうことになってんだよ?」

「だからさっきからだと言っただろう。」

「そうじゃなくてっ!……お前オレの事好きなのか?」

間違ってたら殺されそうなセリフだが、デュオは思い切って聞いてみた。

何を今更と言わんばかりの顔でヒイロはデュオを見る。

それを正確に読み取ったデュオは脱力した。

「……なぁヒイロ。分かる訳ないだろ〜。」

「何故だ?お前も俺のことが好きだろう?」

どうやったらそんな答えが出てくるのかデュオにはさっぱり理解できない。

「どうやったらそんなめでたい考えが浮かぶんだよ?」

段々ヒイロという男が分からなくなってきたデュオ。

「だったら何故お前はわざわざ地球に来てまで俺と会う?情報交換だけだったらメールでも出来るだろう?」

そう言われて黙るデュオ。

「俺は会いたいと思っているから会う。お前もそうだと思っていた。」

デュオは考える。

何故わざわざシャトルに乗って地球に降りる?

情報交換だけなら確かにメールで済む。

だったら?

オレもヒイロに会いたかったってことか?

「あ〜オレも同じだよヒイロ。」

頭をぽりぽり掻きながらデュオが答えた。

「そうか。」

ほんの少しだけ表情が緩んだヒイロが腕を伸ばして来る。

それをデュオは軽く後に下がって交わした。

「おっとヒイロ。ここどこだかわかってるか?それに……当分は清いお付き合いだからな!」

このままヒイロのペースに嵌まると何をされるか分からないと考えたデュオは先に釘を刺す。

「OK?ヒイロ。」

「………了解した。」

少し不満そうなヒイロを見て噴出しそうになるデュオだった。

「じゃ、取り敢えずどっか行こうぜ!」

そう言ってデュオは歩き出した。










これから時間は沢山ある。

まずはどこに行こうか?何をしようか?

彼等は漸くはじめの一歩を踏み出した。











あとがき
何だかエロもどきなSSが続いていたので、自分の中では新鮮です(笑)
6月に入ったという事で、心機一転して初心に戻るべくプラトニックを☆
でも今回カッコイイオレ様ヒイロを目指した筈なんですが、これじゃただの自信過剰な奴…(汗)
「カッコイイヒイロ〜早く戻っていらっしゃ〜い!」と叫んでおこう(笑)
今更ですが、前半部分はあんまりいらんかったな〜と思います。無駄に長いしね(^_^;)
しかも面白くないありがちネタだからね〜。自分の中では激しく微妙!
取り敢えず、二人ははじめの一歩を踏み出したんだ!ということでお願いします!

2006.06.01     葵